私にはドラマが無い
私は写真を勉強しているので色んな写真を見ているのですが
皆それぞれのドラマがあるなあ、と、毎回思います
そう感じたのは昨年の秋、"2019写真新世紀"という展示を見てからでした
写真新世紀とは新人写真家のフォトコンテストなのですが、昨年受賞された方たちは、それぞれのドラマを撮った作品がとても多かった
例えば母親がアルツハイマーになった、とか、父親が死んだ、とか、自分自身がうつ病になった、とか。
(勿論、ドキュメンタリーではない、肌のみの写真だったり、風景だったり、映像だったりもあったのですが)
最近では学校の先輩の卒業制作がそうで、
母子家庭、父子家庭であったり、複雑な家庭環境だったり、とにかく家族を撮るひとが多くいた(まだ審査の段階なので詳しく見られてないけれど)
一方私は、血の繋がった両親がいて兄がいて、可愛い猫もいる(幼い頃母が病気になって今も薬を飲み続けているが平穏に暮らしているし)
今までの人生も、
決して裕福な家庭ではないけれど、本当に欲しいものは買ってもらえていたし、やりたいことをやらせてもらえている
大きな病気にもならず、学校も中の下くらいで、友達は少ないけれど素敵な人ばかりだし
とにかく幸せな人生だった
写真新世紀も卒業制作も、辛くて悲しいテーマが多かった
私にはそういうドラマが無い。
きっとこれから、人生の分岐点みたいな、挫折とかその逆とか、衝撃的なことが起こるのかもしれないけれども
今はまだ、無い。
となると、私は何を撮ろう。
ぽつらぽつら、悲しむことも苦しんで落ち込むことも勿論あるけれど、そこまで深く無い、なんとなく生きているし
そんなことをずっと考えている
別に、悲しいことを撮った作品だけが良いわけでは無いけれど。でもやっぱり、悲しさを落とし込んだ作品ってストレートで、心に刺さりやすいし動かしやすい。
最近の日本の縮図なのかもしれないとも思った
離婚する家庭も珍しくないし、働いても働いても満足に暮らせなかったり、老後生きていけるかの心配があったり、とにかく自分のことで精一杯、そんなストレスにまみれた日本人だから、暗いテーマが多いのかも。
幸せな人生を送れてきた私はどうしたらひとの心を動かせるんだろう、なあ。
そう考え始めたら、人生に不幸なことがあったひとってずるいなと思う、こんなこと言ったら言葉にできない悲しみを与えてしまうと思うけれど
上に書いたこと全部、今日出会ったカメラマンの方に話したら、
ドラマが無い私が、これからどんなものに心を動かされて、どんなものを撮るのか、楽しみだと言ってくれた。
自分の撮りたいものが明瞭でない
だから私は写真を撮り続けているんだろうなと思う